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お寺にある「これ何!?」 鳴らし物編


お寺を散歩したり、法事でたまにお寺に行くと「これ何!?」「何に使う物!?」と意味も用途も摩訶不思議な物にあふれている。


そんな、お寺にある「これ何!?」を紹介します!!!


意外な使い方、意味があるかも・・・

目次

梵鐘(ぼんしょう)

お寺の鳴らしものといえば、梵鐘ですね。近所のお寺に「除夜の鐘」で撞きにいかれたことがある方も多いのではないでしょうか。また、夕方5時などに時報として撞いているお寺も多くあります。私も小学生の頃、近くのお寺で夕方4時55分に遊びにいくと鐘を撞かせてくれるのでよく行っていました。
梵鐘は一番音が遠くまで届く鳴らし物でもあるため、小高く周りに建物などの音を遮るものが無い場所によく建てられ、お寺の中だけでなく町中に音が届くようになっています。

時報としての梵鐘

現代は、時計があるため特に音で時間を確認する必要はありませんが、明治時代以前は鐘の音で時間を把握していました。時報としての鳴らし方は曹洞宗の本山永平寺で今でも引き継がれています。永平寺の修行僧は電子機器を持っていないので勿論時計も持っていません。全ての修行生活は鳴らし物中心で行われます。
・日の出に撞く「暁鐘(きょうしょう)」
・正午に撞く「日中鐘(にっちゅうしょう)」
・日の入りに撞く「昏鐘(こんしょう)」
・寝る時間も知らせる「開枕鐘(かいちんしょう)」
があります。
それぞれ本来は30分ほどの時間をかけて108回撞きます。
目覚まし時計がない時代は有難いですね。スヌーズ機能が自動で108回も鳴ってくれます(笑)

しかし、なぜ30分もかけて鐘を撞くのか。ちょっと長過ぎますよね。撞く人も結構疲れます。この理由は昔の中国の街の構造にあります。昔の中国の城は、日本の城とは異なり、民家を含んだ街全体を取り囲んだ大きなものでした。夜間は城の門を閉じ、人の出入りを制限するのが決まりでした。なので、郊外から城へ出入りしている人は日の出から日没の間に門を通らなければなりませんでした。そこで、鐘や太鼓を長時間に渡って鳴らし、人々の注意を喚起したのです。もし鐘が一回鳴っただけで門が閉まったら困りますからね。

警報としての梵鐘

梵鐘は時報だけではなく、盗賊・火災・嵐などの有事の際にも鳴らされました。その鳴らし方はお寺や街の決まりで様々ですが、街全体に有事を知らせる有効手段として用いられました。また、戦争の伝達にも用いられ、隣町の鐘の音を聞き同じように鳴らすことによって数百キロ離れた所まで音で情報を伝えていた記録が残っています。
現代のように家が立ち並び高層ビルが乱立する時代からは想像できないほど昔は鐘の音が遠くまで響いたのでしょう。

名前の由来

「梵」という字が付きますが、これは梵字を表す文字です。梵字とはインドのサンスクリット語またはパーリ語をあらわします。鐘の音が梵字の枕詞である『唵(おーん)』に似ていることから梵字を発する鐘ということで「梵鐘」と呼ばれるようになりました。
正泉寺では法要の前に梵鐘を撞いていますが、これは仏陀の49年間の説法が集約されていると言われる「唵」の音で教えを説く道場を浄め、さらに近隣の寺院の僧侶へ「仏陀の教えを説く法要を行うぞー」と知らせ、正泉寺へ集まるよう促す意味があります。

木魚と魚鼓(梆)

さて写真にある謎の龍なのか魚なのかよくわからない木のオブジェ。これこそが実は木魚の原型です。これは「魚鼓(ぎょく)」と言います。木魚といえばお経のリズムをとる鳴らし物と認識されています。しかし原型である「魚鼓」は全く別の使い方をします。「魚鼓」は食事の合図を知らせる鳴らし物です。中が空洞になっていて長い木の棒を使い打ち鳴らします。

魚鼓(梆)

この魚とも龍とも取れない形には二つの意味があります。
一つ目は魚は瞼がなく眠らない生き物だからです。修行僧が食事をする場所は「僧堂」と言い、「僧堂」では坐禅・睡眠・食事を修行します。座禅の際も食事の際も睡眠に至るまで、魚のように常に覚醒し仏の行いを全うしなさい、という意味が込められています。
二つ目は中国の故事「登竜門」が由来です。鯉が滝を登りきると龍になると言う伝説です。
日本にも鯉のぼりとして馴染みがあると思います。鯉のぼりは端午の節句に男子の「健やかな成長と立身出世」を願う意味があります。今は鯉である男子がいつかは立派な龍になるようにという親心を表してるのですね。
個人的には鯉のぼりよりもポケモンのコイキングとギャラドスを思い出します(笑)
この「魚鼓」ですが、読み方が宗派によって異なります。黄檗宗では「魚鼓(ぎょく)」・曹洞宗では「梆(ほう)」・臨済宗では「魚梆(ぎょほう)」「魚鼓(ぎょく・ほう)」と様々な呼び方があります。ちなみに「魚鼓」は中国発祥の鳴らし物なので中国仏教である禅宗(黄檗・臨済・曹洞)の寺院にしかありません。

木魚

この鳴らし物は馴染みがあると思います。中には自宅の仏壇のあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。木魚は魚鼓を元に中国の明代(1368~1616年)に読経のリズムをとるために考案されました。ちなみに読経が重要視され始めたのもこの時代と言われています。それまでは、お寺では座禅と作務が中心でした。
日本には黄檗宗の伝来(1654年)と共に伝えられました。読経にメロディーのごとくリズムを乗せる鳴らし物は当時ものすごく斬新で人々の興味を引きつけました。ついには禅宗のみならず浄土宗に至るまで普及しました。そして明治時代になるとほぼ全ての寺院でこの木魚が使われるようになりました。
ちなみに、アニメ「一休さん」でお馴染みのポクポクチ~ン!という効果音。一休さんがいた室町時代には木魚がなかったのでおかしいですね〜(笑)なんの音だろ〜

磬子

「けいす」と読みます。お寺の本堂に行くと必ず置いてある鳴らし物です。「鐘」が寺院内や街中に情報を知らせるために鳴らすのに対して、「磬」は本堂内で法要中の合図の為の鳴らし物です。
また形も「鐘」が上から吊るされているのに対し「磬」は台の上に乗せ口は上を向いています。お経を読む際に導師が焼香に進む合図であったり、お経の題名を唱える際の合図などに使います。しかし、勿論合図なので大人数で法要を行う際に意味があるので、現代のように住職一人で法要を務める時にはあまり必要ないかもしれません。
ちなみに「磬」という字に「石」という字が入っているのは、昔金属加工技術が乏しい時代は石を打ち鳴らして使われていたからです。
「磬子」には「大磬」「小磬」「手磬」の三種類があります。

太鼓

太鼓は別にお寺じゃなくても見る機会がたくさんあると思います。前述した魚鼓も太鼓の一種とされていましたが、動物の皮を張った太鼓が発明されるとより音が響く太鼓に置き換わったようです。
現在、寺院では供養法要では木魚を祈祷法要では太鼓を使いお経のリズムをとる場合があります。また、大きな法要の際、バチを細かく振るわせ叩く「大擂(だいらい)」と言う打ち方をします。これは、今から行われる説法は雷のように力強く人々の心に響き渡る、という意味合いから鳴らされます。
また、永平寺のような僧侶がたくさんいる寺院では「普請鼓(ふしんく)」といい、作務の集合の合図にも使われます。

祈祷太鼓

この薄い形の太鼓は祈祷太鼓(きとうだいこ)といいます。字のごとく「祈祷」を行う際に使われます。「祈祷」の際は風習としてお経のリズムは木魚ではなく太鼓によってリズムをとります。
曹洞宗では祈祷のようなオカルト寄りな行事は一般的でないため、あまり目にする機会はないと思います。

雲版(うんぱん)

こんな鳴らし物見たことないよ。という方が殆どであると思います。それもそのはず、これは寺院の台所にある鳴らし物だからです。お寺の台所に入ったことがない人は見たことがないと思います。見ての通り雲の形をした鳴らし物です。食事の準備が整った合図として用いられます。
火を扱う台所なので防火のおまじないの意味が込められています。

その他鳴らし物

妙鈸(みょうはち)・銅鑼(どら)・戒尺(かいしゃく)と禅宗の葬儀で主に使用される鳴らし物があります。
歌舞伎に行かれる方は戒尺の音を聞いたことがあると思います。幕が開かれる時や幕切れの時に鳴る音です。四角い2本の拍子木を打ち合わせることで音をだします。その音と楽器のことを両方とも歌舞伎では「柝」[き]と呼びます。仏教ではこれを仏陀の「戒」と呼ばれる教えを授ける時に使用し「戒尺」と呼びます。
まだまだ他にもたくさんの鳴らし物があります。気になったら是非正泉寺にお越しいただいた時に聞いてみてください。

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