正泉寺の植物 その④『香木』
昔は土葬が主流であり、遺体を埋葬したあと動物が掘り起こすのを防ぐために香りの強い植物を供えた。
根元から萌芽し、叢生する。良く枝分かれし、剪定しないと樹高は10mを越える。
材は堅く、香気があるので、細工物などに使われる。
葉は互生し、長楕円形。質は革質で両面無毛。縁は全縁で、波状になる。揉むと芳香がある。
乾燥させた葉は、香料としてスープや、肉料理などによく使われる。
正泉寺では選定を定期的に行い1.5m未満に整えている。
目次
- ○ 香りの成分とお寺での役割
- ○ 香りの意味
香りの成分とお寺での役割
香りの成分は1,8-シネオールという天然化合物。無色から淡黄色澄明の液体で、樟脳に似たさわやかな匂いとすっきりした味を持つ。大気に触れると次第に褐色を呈し、一部樹脂化する。
消臭剤として使用され、消臭率は90%以上である。これはシネオール自体が芳香する為ではなく、悪臭ガスの吸着をする為である。この吸着したガスは高温になると脱着する。
また、抗菌作用がある。
現代ではお参りに線香が使われる。しかし、お香を練り固める技術が確立したのは明治時代。線香の価格が下がり主流となったのは戦後。
江戸時代などは、線香が無く焼香用の抹香が主流だった。しかし、抹香はジンチョウゲ科の樹木を傷つけた際にしみ出す樹液の脂分であるためとても高価であった。そこで庶民や僧侶は枝や葉から香りのする樹木を粉末状にして手に塗る「塗香」を用いた。
香りの意味
法要や葬儀の際、日本では焼香をするのが慣習になっている。じつは、この由来は葬儀や先祖供養ではない。
抹香を焚き香りと煙を出す理由は大きく分けて3つある。
①言語や概念、記憶と「嗅覚」を結びつける為
特定の香りを嗅ぎながら日常生活の戒めを学び、その香りを誘発剤として自己を律する為に用いられた。
②昔の香水と同じく体臭や屋外の家畜などの匂いを消すため。
昔はシャンプーも無く、お風呂に毎日入る習慣も無い。体臭を消すために部屋にお香を焚き臭いをごまかすことがしばしばあった。また、動物も道をよく歩き糞や尿も垂れ流しである。道は悪臭を放ち衛生的に劣悪な環境である。
その悪臭を消すため、そして悪臭による心の乱れを無くす為、香り良きお香を焚く習慣が出来た。
③消えゆく無常の香りと煙を感じる
香りも煙もいつの間にか消えていく物。その無常観を感じる為に香りを焚き煙を見る。
仏教では焼香の際に偈文を唱える事があります。
『戒香定香解脱香 光明雲臺遍法界 供養十方無量仏 見聞普薫証寂滅』
『かいこうじょうこうげだっこう こうみょううんたいへんほっかい くようじっぽうむりょうぶつ けんもんふくんしょうじゃくめつ』
戒めの香り 心を落ち着かせる香り 心の垢を落とす香り これが巡り多くの人々を救うという意味です。